2025年5月21日、米国議会において、ブロックチェーン業界に大きな影響を与える2つの重要な法案が進展しました。ステーブルコイン規制を目的としたGENIUS法案が上院で正式に審議入りし、同時に、非カストディ系開発者を保護する**Blockchain Regulatory Certainty Act(ブロックチェーン規制の確実性法案)**が下院に再提出されました。
【1】GENIUS法案とは?──ステーブルコイン発行に明確なルールを
GENIUS(Government and Enterprise Need for Innovation in the United States)法案は、ステーブルコイン市場の健全性を確保することを目的とした包括的な規制案です。詳細な内容は以下記事を参考に。

5月19日のクロージャー投票(66–32)を経て、21日には賛成69–反対31で正式な審議入りが決定。今後、上院での修正提案や詳細な議論が行われます。
クロージャー投票時の速報記事はこちら

主なポイント:
- ステーブルコインは高品質の流動資産(米国債や保険付き預金)で1:1の裏付けを要求
- 利回り付き商品の提供は禁止
- 発行者はKYC、AML、不審取引監視に準拠
- 規模に応じて連邦または州の規制当局による監督が義務化
これにより、特に銀行ライセンスを持たないステーブルコイン発行者にとっては厳格な規制が課される可能性が高まり、マーケット構造の見直しが迫られます。
【2】開発者保護に動く下院:Blockchain Regulatory Certainty Act 再提出
一方、下院では非カストディ型のブロックチェーン開発者やノード運営者を過剰な規制から守るための法案が再提出されました。
この法案は、暗号資産や分散型アプリケーション(DApp)の普及に欠かせない**「開発者」や「基盤インフラ提供者」**が、送金業者や金融機関とみなされることを防ぐものです。
主なポイント:
- 資産を直接管理しない開発者・オペレーターにはライセンス義務なし
- 「コントロール(支配)」とは、第三者を介さずにデジタル資産を操作できる法的権限と明確に定義
- 州法との整合性も維持しつつ、連邦レベルでの*セーフハーバーを提供
*セーフハーバー:特定の条件を満たすことで法的責任や規制の適用を免れる仕組みで、今法案ではブロックチェーンソフトウェアの開発者やノード運営者、カストディ(顧客資産の管理)を行わないサービス提供者などが対象となる。
この法案が通過すれば、開発者は不確実な法的リスクから解放され、革新に集中できる環境が整います。
【まとめ】トレーダー・開発者に共通する注目点
今回の2つの法案は、それぞれ異なるプレイヤーに影響を与えるものですが、共通しているのは「透明性と責任の明確化」です。
- トレーダーにとっては、ステーブルコインの信頼性と規制リスクの変化を見極める材料に。
- 開発者にとっては、規制リスクの範囲が明文化されることで事業設計がしやすくなる。
今後の審議・投票の結果次第では、ブロックチェーン産業全体の方向性が大きく変わる可能性があります。特にGENIUS法案の最終条文の内容と成立タイミングには要注目です。
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